FC2ブログ

漫画家きむらひろきのブログ

大公開日誌

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --年--月--日 --:-- |
  2. スポンサー広告

大仕事を振り返る

10/16に無事、発売となった、

「学研まんが 科学ふしぎクエストシリーズ 人体迷宮を調査せよ! 食べ物のゆくえ編」
(告知と詳細は→こちら

の仕事は、半年に渡る大仕事だったので、ちょっと振り返ってみようかと思います。
ところで、私は此処まで規模の大きい書き下ろしの仕事って、初めてのことなので、それで「大仕事」と言っています。
こういう仕事の多い作家さんには、大仕事でもなんでもないかも知れない。
そして自分も、二度目以降は振り返らないかも知れない(笑)。

※長くなりそうなので畳みます。


長いお付き合いの編集プロダクションの、長いお付き合いの編集さんから、このお仕事の話が最初に来たのは、昨年末くらいでした。
猫が仕事持ってきた!と思いました。いや、猫関係ない仕事だけど、クロネさん拾って3ヶ月目くらいだったから(笑)
でもまあ、最初から「仕事」ではなくて、コンペみたいなものやって、そのための絵を色々描いたりして、年が明けて2月くらいからようやく
「よろしくお願いしまーす」
となりました。
学研の編集さん、(本誌コラムなど書かれた)ライターさん、とも顔合わせして、お約束の
「えっ、きむらひろきさんって女性だったんですか」
も飛び出して、制作チームが成立。

この仕事を引き受けるに当たって一番最初に自分がしたことは、面倒くさいことになるかも知れないな、という覚悟。
とにかくこの手の仕事は面倒が多い。
チェック機関が多くて、返事が遅いとか、ブツが出来上がってからでも修正を要求されるとか…
一番しんどいのは、相手が「漫画」をよく知らない立場だったりする時。相手とこちらの意図が噛み合わない時があったり。仕方がないからこちらが折れて相手の言う通りにすると、漫画として変なものになってしまったり…
こういう「面倒」を、腹を括って全部受け止めないとこの仕事は出来ないだろうな、と覚悟したわけです。最初に。

でも今、仕事の全てを終えて思い返して見ると、その「覚悟」は殆ど杞憂に終わったと思う。
とにかく気持ちよく仕事できてたというか。流れが良かったというか。
いや、そう思ってるの私だけかも知れないですが、だとすると、間に挟まってくれた編集さんのクッション能力が優秀だったとも言えます。この手の仕事は本当に、胃が痛くなったり胸焼けがするような気持ちの悪い感情になることが多いのに、そういうモヤモヤを殆ど感じなかった。
チームに、人に恵まれたんだなあ、と思いました。
みんなで集まって編プロの事務所で打ち合わせする時も、緊張感より充実感が大きかった。ライターさんのお話が楽しくて、うっかり脱線したお喋りになるのを編集さんが慌てて止めたりして。
そんな良いムードだったから、よしこっちもネーム頑張るぞ~、面白いって唸らせたいぞ~、って気持ちも盛り上がり。言ってしまえば「自分の自由が利かない漫画」仕事で、こんなに充実感や高揚感を得られたのは初めてで、こういう事ってあるんだなあ…と驚きました。
齢45にして初めて知る(笑)。


ネームを描き始めたのが2月下旬、そこから打ち合わせとリテイクを繰り返し繰り返し、150ページ全てのネームを描き上げたのが3月下旬。(自分にしてはあり得ないスピードのネーム作業でした。普段の漫画じゃできません)
4月に入って作画開始。
最初に申し渡された作画〆切は8月14日(実際は17日まで時間を貰いました)。

作画に入ってまずした事は、日数の計算。
私は週の4日は学校の仕事があるので、残りの3日しか作業出来る時間はありません。
そこで、4月にスタートしてから〆切までの4ヶ月半で、何日間作画出来る日があるのか全て書き出し、そこから、線画に何日かかるか、仕上げに何日かかるか、すると一日のノルマはどれだけやれば間に合うか…を割り出しました。
そこで出たのが
・線画→ノルマ1日3ページで50日必要
・仕上げ→ノルマ1日10ページで15日必要
ものの見事に休日なし。ちなみに睡眠は最低6時間必須。寝ないと目眩の発作が出て作業時間をロスするので。夜更かし厳禁。
厳しい条件だったけれど、もうネームは出来てるし四の五の言わずに黙々と毎日ノルマを必ずこなせば絶対終わる。
よし、大丈夫だ。
思ったんですわ、この時は…

いやいや、50日間線画を描くことは問題なく出来た。
線画はアナログです。手書きです。ネームをコピーしてトレースして下書き描いて、主に筆ペンとミリペン使ってペン入れしました。ゾロリの時に使ってた線画用の画材を、久しぶりに買い直して使いました。
絵によっては結構メリハリの効いた線を描いてると思いますが、これも筆ペンの線です。先がフェルトのしっかりしたタイプの筆ペン。
(集中線みたいな効果線はデジタルです)
時々ノルマに達せない時は、学校の空き時間に原稿描いて補ってました。そうやって来る日も来る日も黙々と50日。
150ページ書き上がって、思いましたもん、俺カッコいい!(笑)
その線画は終わったものから順次、マネKさんにお手伝いで作業して貰いました。線画にケシゴムかけてスキャナでグレスケ取り込み。レベル補正してゴミ取って修正して、キャラやメカの基本色の地色をどんどん塗り込んで貰いました。ソフトはクリップスタジオ。

さあ、こっからです。きむらひろき、この仕事で初めて「やべえ」と青くなる。

クリップスタジオを使った仕上げ作業が思ったよりも慣れなくて、1日ノルマ10ページなんてとてもとても。出来たもんじゃなかった。
初日、どうにかこうにか3ページ。
こんなに時間かかるもんなの!?
仕上げノルマ10ページというのは、モノクロで漫画を仕上げてた時の目算でした。
コミックスタジオ(クリスタじゃなくてコミスタ)使って、1日15ページくらいやってた時もあったので、10ページならカラーでも大丈夫だろう…という読みが、まったくもって甘かった。
しかしよく考えてみれば、クリスタを仕事でちゃんと使うのは今回が初めてで。
ツールの場所もおぼつかず、機能もロクに把握しておらず。
尚かつカラーというのはモノクロと違って、「基本全部塗る」わけで…

なんでそんな甘い読みをした、4月上旬の俺!!

過去の自分に怒ってみても何もならないので、現実的にどうしたら良いか、狼狽えつつも考えました。
解りやすいのは、デジタルアシさんを頼む。
しかしそれには、同じ作画環境があって、尚かつ、「ネームと下地を塗り込んだ描きかけのデータを見て、独自判断で仕上げの出来る人」にお願いしないとならない。なぜなら逐一、指定を与えている時間が無いからです。それだったら自分が描いた方が速い。
ともあれ、独りで悩んでもいいことないので、編集さんへ現状報告。
こういう状況で、アシさん確保の可能性も有るけど、まだ慣れていないこともあるから一週間、様子見させて貰えますか?と。
そして、どうしてこんなに時間がかかるのか考えながら、数日作業を続けました。
どこかに作業的無駄があるんじゃないか?迷いがあるんじゃないか?
もう少しソフトに慣れればスピード上がるんじゃないか?
ヒヤヒヤしながら数日間やっていくうちに、なんとか、1日8ページまでなら仕上げられるようになって…足らない分は学校のある日にノルマをねじ込む。これなら……!

よし、(今度こそ)大丈夫だ!!

…単純だなあと自分でも思いますが、この「ノルマの見通し」が立った時、本当にスッと心が軽くなったのですよ。自分はこういうものが見えないと前に進めない人なので、だから何でも作業の最初に、日程を組むんです。「やることリスト」作ったりね。

それから、ノートPCやタブレットを学校に持ち込み、空き時間が有ればひたすら作業。帰って時間が空けば作業。
やがて学校は夏休みに入って、ひたすら自宅で作業作業。
悩まない、考え込まない、機能が解らなかったら勘に頼らずすぐ調べる。
(後輩が出したクリスタの良書を教科書にしてました。感謝!モノクロ漫画を描くことが中心の本ですが、カラーの基本も押さえていますし、特に初心者の方に解りやすく、とてもオススメです。→Clip Studio Paintマンガ制作テクニック
そうして8/16、最初の〆切をクリアしました。

最初の、と言ったのは、更にそこから結構な量の修正と、ブラッシュアップをしたからです。
ただしそれは始めから承知の上でのことだったので。だからこそ、「後から修正出来るから悩まずにスピード出して塗ろう」が出来たとも言えるし。
最初の〆切が終わった段階では、こちらの頭は真っ白になってて、そこは手練れの編集さん、よく解ったもの。数日間をおいて、クールダウンしてから、修正と加筆の話を打ち合わせしました。

この時、カラー学習漫画の難しさを改めて知りました。
なんでもその場のムードとかキャラの感情だけで色を選んで、背景を塗っちゃダメだということ。これ、少しなら良いんだけど多すぎると、キャラがどこにいるのか解りづらくなるんですね「色がある故に」。
モノクロ漫画よりカラーは、色が有る分、読者に与える情報が多くて、使いすぎると読み手を混乱させてしまう。だから感情やムードで塗る色は必要最低限にして、「キャラはどこにいるか」を表す背景(部屋の壁とか)をちゃんと描いたり、その色を塗る方が良い。
これは児童向けに配慮した事なので、大人向けの漫画ならまた変わると思いますが。

こういう事は、一通り描き上げて編集さんに指摘されるまで、全く意識出来ませんでした。
この意識が持てた事が、自分にとって今回凄く大きな収穫で。本当に、描いたことで学ぶものって沢山あるなって。
そして幸いにも、これを修正出来る時間を与えられたので、最初の〆切から9月の初旬までかけて、隅々まで直しと加筆をしました。学研さんからも、時間の許すギリギリまで手を加えて欲しい、と言われてたし。この言葉も嬉しかった。半端なモノは出したくないって強い気持ちが込められてる気がして。
こうして全ての手直しを終えて、再度提出し、自分の仕事は終わりました。


学研の編集さんから、校了完了のメールを頂いた時、きちんとしたお礼の言葉も一緒に添えられていました。
「みなさまと出会えて、この仕事ができたことに感謝します」
こういう仕事で、こんな言葉を受け取ったのは初めてかも知れません。驚いたし、嬉しかった。
本当に休みなく、ヘトヘトになった仕事だったけれど、また次の機会が有ればいいなあ…と強く思います。
仕事で漫画を描く、という事が自分の中で、この仕事をしたことで、少し色合いが変わって見えてきた様な。そんな思いがするのです。
スポンサーサイト
  1. 2015年10月25日 13:27 |
  2. 日記
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。