漫画家きむらひろきのブログ

大公開日誌

「『草枕』より、那美」

すっかりご報告が遅れましたが、先月2月8日から開催していた「夏目漱石生誕150年展」、無事に終了致しました。
会場に来て下さった皆さま、お礼が遅くなりましたが、わざわざ足をお運び下さいまして、本当にありがとうございました。

告知の時にも書きましたが、自分は漫画仕事ばかりで、展覧会という物にとても無縁というか、引け目を感じていた所もあり、少々緊張していましたが、自分らしい絵をのびのびと描いて出品させて頂けましたし、最終日の搬出時には、他の作家さんから作品の感想なども沢山お聴き出来て、参加して本当に良かったなあ、と思えた経験になりました。
この場で失礼致しますが、お声掛け下さったギャラリーころころの砂古口様、良い機会を与えて頂き光栄でした。ありがとうございました。


出品した絵はこちらです。



700.jpg
題名: 「『草枕』より、那美」

原寸/A3版
使用画材/ガラスペン・Gペン・製図用インク・上質紙


取り込み画像になると、だいぶ潰れてしまうところもありますが、ご容赦下さい。
いつも通りのペン画ですが、今回は、太い輪郭線をこれまでのような筆ペンではなく、ガラスペンで描いてみました。昨年の秋、デザインフェスタでとうとう購入した、憧れの手作りガラスペンです。
しっかりと、こちらのイメージ通りの線を描いてくれました。やはり魔法の杖です(笑)

さて、描いた絵を語るのは無粋かも知れませんが、数ヶ月かけて(私にしては)とても真面目に取り掛かった大切な絵なので、少し語らせて下さい。

まず最初に、これはお話してると思いますが、「漱石展」とお誘い頂いて、自分は夏目漱石に全く触れたことがなかったので(教科書で読んだかも覚えて無いくらいです)、はじめにしたことは読むべき本を決めて、本を買って読むことでした。
こう…ソレっぽいレビューサイトでおすすめを調べたりして。
一冊目に選んだ本が「夢十夜」(多分、短くて読みやすかったからです)
次に「草枕」を読み(冒頭が有名で聞いたことがありました)
そして「三四郎」を読み、「坊っちゃん」を読んで、暫くの間、本に触れずにうーんと唸っていました。
日々唸っている内に、段々もやもやと、漱石作品の「女性像」みたいな物が浮かび上がってきたので、そういうテーマで描こうかなと最初は思ったのですが、そのイメージを構成してる大半が、圧倒的に「草枕」の那美さんに結びついている事に気がつき。
じゃあもう、素直に那美さんを描こうと。

この絵はもう、とても単純な構成で出来ていて、物語の中に登場した那美に関する(と思う)モチーフを、私の描き方で落とし込んだだけです。
縁側で行き来した振り袖。鏡が池の椿。絵の周囲の渦巻き状の物は、那美が裸で現れた風呂場の湯気です。口にくわえているのは久一に選別で渡した白鞘の短刀。
ではなぜ首から上が龍なのか、というのは、物語を読みながら自分には那美さんが、綺麗な異形に見えたからです。これは「三四郎」の美禰子にも思ったんですが、漱石作品の女性は綺麗で一歩踏み込むと怖い、高貴な異形に見える。

そして顔のお面ですが、これは能面の「泣増」をヒントにして描きました。
物語の最後に主人公は、那美の顔に表れた「憐れ」を見て、それが出れば絵になりますと言います。憐憫の表情と泣き増は同じではないかも知れませんが、自分は剛強な龍の顔に泣き増を被せて、最後に那美が元夫を見て垣間見せた、異形が剥がれた女性の顔を表現出来れば良いなあと思いました。


自分はこんな風に、テーマとなる素材を吸収するところから開始した絵の描き方は、恐らく初めてだったため、自分自身とても興味深かったです。難しくもありましたが、見えてくることが面白くもありました。
機会があれば、またやってみたいです。大変ですが(笑)

それでは長いお話に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
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  1. 2017年03月05日 16:40 |
  2. 日記